刑務所を真面目に務め、実際の刑期より早く出所させてもらえるのを
「仮釈放」と言いますが、ちゃんとした身柄引受人がいないと
この「仮釈放」は貰えません。
でも実際にこの身柄引受人がいない人も沢山います。
親族がいなかったり、知人を頼れなかったり。
この場合「更生保護施設」と言う「国」が引受人となることで「仮釈放」が認められます。
仮釈放が認められたら、この更生保護施設に一旦身を置き
生活を始めるわけですが、実際社会に出てから
仕事を見つけて、自分で家を借りて更生保護施設を出るプロセスはどの様なものでしょうか?
刑務所を出所した事を隠しながら仕事を見つける事は簡単なことでは有りません。
こんな話に、ちょーっとだけ詳しいアウトロー主婦がちょーっとだけお話してみようかと思います。
パッと読める目次
仮釈放で出所した日から更生保護施設の生活が始まる
更生保護施設とは一体何?
更生保護施設とは、刑務所や少年院を仮出所した人たちで
身寄りがない人や引受人がいない人の受け皿になり一時的に保護する施設です。
保護した人たちの食事や宿泊場所などの提供をして、社会復帰や自立に向けた指導などを行います。
出典:更生保護ネットワーク
刑務所を出所した人の約6分の1がこの更生保護施設に保護を受けています。
全国に男子が89施設あることに対して女子は全国に6施設。
男女共用施設を合わせて計14箇所あります。
更生保護施設で生活する上での決まり
施設によって多少の決まりの変動はあるものの、大体は似たような決まりごとがあります。
- 髪の毛は明るくしてはいけない(いきなり厳しい)
- お金は必要以上に持ち歩かないように管理される。毎日おこずかい帳をつける。(真剣に付ける)
- 携帯電話所有禁止(今時携帯がないと本当に何もできません)
- 基本門限は18時(全員守ります)
- 他の人の部屋に入ってはいけない
たくさん細かい決まりはあるのですが、普通に生活に支障が出てくる様な
決まりもたくさんあります。
染毛禁止
これは女子なら出所したら一番にでも綺麗にしたいところだったりします。
長い刑務所生活で白髪だらけの人が白髪染めをするくらいなら(暗め)何も言われませんが過度に明るすぎると色々注意されます。
表向きの注意の仕方は「就職活動や働く上で不利になるから」なんですが
実際は近所の目。なんです。
更生保護施設は一般の居住地に普通に建てられているぱっと見、女子寮のような作りなんですが昔から住む近所の方達は、そこがどんな所かよく知っています。
つまり、刑務所帰りが集まる施設だということを知っているのです。
ただでさえそんな印象の悪い建物があるのに、そこを派手なおばさんや若い子が出入りしていたらどうでしょうか・・・?
おこずかい帳をつける
もうね・・なんなんでしょうかね?
「家計簿」じゃないんですよ。
ちゃんと表紙には「おこずかい帳」ってしっかり書かれてる猫ちゃんの絵まで書いてあるような子供用のやつですよ。
これにしっかり毎日使った金額と購入したものを書き込んで、レシートも貼る。
そして週に一回、事務所に提出です。
使途不明金なんかがあったら大騒ぎです。
寮で暮らしていく上での寮費や食費はかからないので「お金を使う機会は電車賃くらい」みたいな事を本気で職員に言われたりしますが
実際には美容院にも行きたいし下着の一枚も買い揃えたいのでそこら辺はあまりうるさく言われません。
出所する時には大体みんな、作業報奨金(刑務所で働いて貰えたお金)を持って出所するので少しくらいは自由になるお金は持っています。
3年務めた人で、大体7万〜10万くらいでしょうか・・。
しかしお金の管理は事務所がしているので出所した時にいくら持っていて
これだけは事務所に預けなさいと半ば強制的にお金を管理されます。
私は家計簿や、ましてやおこずかい帳なんて30うん年間付けたことが無いわけですよ。
当然おこずかい帳、サボります。できないんですもん。
そしてまた一週間後にヤイのヤイ言われ、実はおこずかい帳を付けたことが無いと白状して叱られる。
「自立した時に困るのはあなたです。しっかり付けなさい!」と。
トホホ・・・。子供じゃ無いんやから。
これをしなければならない理由としては
お金の管理をしっかり身につけて、自立した時にお金の無駄使いや
衝動買いなどをせずちゃんと貯金しながら生活していけるように。
なんですが、結構みんなお金を使いたいですし、おこずかい帳を細かく書きたくない人たちも出てくるわけです。
出所してすぐは特にお金、使いたいですから。
あの紙のお金や、小銭に触れるのに何年も何十年もかかった人たちばかりですから・・
携帯電話所有禁止
これは、外部との連絡をなるべくしないためです。
電話が必要な時は会話が聞こえるように設置されたような事務所の横の公衆電話を使います。
公衆電話ですよ?お金いるやん!
今時、大体電話かける相手って「携帯電話」にかけるやん。
めっちゃ公衆電話にお金を吸い込まれるわけですよ。
チャリンっ!
チャリンっ!
いやいやいや!早い早い!
めっちゃ気になる!めっちゃ10円へる!って言うかさっき100円入れたとこ!
おこずかい帳に書く中で一番の無駄使い!
ってなるわけです。そして横でしっかり話を聞かれてるって言うね。
外部との連絡を取らない。
これは、早い話がまた悪い仲間と連絡を取らないようにするためです。
でも本当に困るんですよ携帯電話がないと!
これについては後記しますのでぜひ読んでみてください。
門限は18時
これも似たような感じで、夜遊びはダメよ。
という事ですかね。
夕食は必ず20人前後の寮生全員で食べるので、その時間に合わせて帰って来なさい。
と言う事です。
もちろん例外で、仕事や用事で遅くなる場合は前もって連絡していればドアの鍵を閉められることは無いですが。
一旦帰宅すると「ちょっとそこのコンビニまで」もダメです。
外出禁止。外泊なんてもってのほかです。
なので皆、自由を求めて早く自立できる貯金をして
この更生保護施設を出たがります。
他人の部屋訪問禁止
揉めます。他人の部屋に入ったら揉める元です。
と言われています。
二人で一部屋(大体8畳くらいの部屋)が10部屋くらいあるような寮ですが
自分たちの部屋以外の他人の部屋には入ってはいけません。
理由としては色々あるようですが、物が無くなったり喧嘩になったり
一緒に悪事を働いたりする機会が増えるからと言うのもあるようです。
更生保護施設の一日
am5:30 | 起床。軽く洗面 着替え 布団畳んで下に降りる |
---|---|
am5:40 | 朝のミーティングと寮内の掃除 |
am6:00 | 朝食。朝早く仕事に行く人を除いては全員で朝食 |
am6:30 | 順に支度をして仕事に向かう。 |
それぞれが就活や仕事へ外出 | |
pm17:30 | 皆が順に仕事から帰宅 |
pm18:00 | 夕食(必要最低限の会話のみ) |
pm18:30 | 夕飯のかたずけ。掃除が終わってから風呂(二人ずつ一緒に) |
pm19:00 | 部屋で自由時間 |
pm22:00 | 消灯 就寝 |
朝食、昼食(仕事をしている人にはお弁当)夕食は職員さんが作ってくれるので
寮生はその準備と後かたずけの洗い物を皆でします。
刑務所よりかは自由ですが、食事中にワイワイ楽しく会話といった事は禁止です。
仕事がまだ決まっていないものは、毎日のようにハローワークに駆り出されます。
風呂は刑務所のように15分といった決まりはありませんが、まだ皆刑務所の名残が身についていてお風呂は、みんな早く
20人全員が風呂に入り終わるまでに3時間とかかりません。
でも刑務所と違い、お風呂で会話ができる事で
「社会に帰って来たんやなぁ・・」と言う実感が沸いて来ます。
夜の余暇時間(2時間程度)にみんな何してるのかと言うと
大体、皆なんか食べてます。
刑務所にいた時に食べたかった、あれこれをたくさん買い込んできて。
いきなりですが、女子刑務所で一番人気のある本や雑誌
何か想像がつきますか?
正解は食べ物の本です。
もう食べることばかりです。頭の中。
お取り寄せの本がダントツ!購入本で人気なんですが、他にもパンの本。
このパンの本も人気で、月に3冊本が買えるのと
月に3回外部に手紙がかけるんですが皆、手紙には
「食べものの本を差し入れして下さい」「パンの本をお願いします」と書いています。
それぐらい食べ物に飢えているので出所したら自分のノートに書いてきた
「出所したら絶対食べたいもの」を片っ端から買って、こうして夜な夜な食べ漁ってると言うわけです。
刑務所では物のやりとり(あげたり、貰ったり)は懲罰ですが、更生保護施設は刑務所ではないのでお菓子もシャンプーも石鹸も本も自由にやりとりができます。
なので、他人の部屋に入ったらダメですが毎晩余暇時間になると
同じ部屋の子と、他の部屋の入り口をノックしてお菓子交換会がはじまります・・。(ドアの前で)
一人部屋もありますが大体が二人部屋です。
仕事で疲れていても、誰かが廊下かで話をしていたり
TVなんかを見て大声で笑っていたり、下にある喫煙所でコソコソと内緒話をしていたり
消灯までは、割と寮内は明るいです。
更生保護施設で仕事を探すときに一番困ることとは?
携帯電話を持っていないだけで就職できない現実
先ほども述べた様に、携帯電話所有禁止。
これは就職活動に大打撃です。
今時、仕事を決めるのに携帯電話がないとまず面接で怪しまれますし仕事の連絡を取るのに絶対必要になってくるものです。
更生保護施設からハローワークに通いますがハローワークの担当の人までは
刑務所帰りと言うことは知っていますが、仕事先には内緒にして探すことがほとんどです。
仕事を選ばなければ、刑務所帰りだと了解の上で働ける場所も提供してくれますが
一緒に働く人達は当然知らないので結局内緒で働くことになります。
ですが、携帯電話さえ持ってなかったら仕事が本当に決まりません。
ただでさえ働き口が狭いのに携帯電話がないだけで皆、面接さえもして貰えないと帰って来たりします。
なので「職場で必要なので携帯電話の所有の許可を下さい」と事務所にお願いする事になりますが許可も簡単にはおりません。
許可がおりたとしても暇な時間に寮内でネットをしたり・・
部屋で自由に好きな人と電話でおしゃべり・・なんかもできません!
なぜかと言うと仕事以外に携帯電話を外に持ち出すことが禁止だからです。
仕事から帰宅したらまず、部屋の鍵を取りに事務所に入ります。
その時に携帯電話の電源を切って事務所に預け、朝出勤の時に携帯電話を受け取ると言う決まりです。
それって・・・意味あるんでしょうか?
会社からの急な電話が夜にかかってきても携帯は電源の入ってない状態で事務所に預けたままです。
そんな時は「自宅の番号といって寮の電話番号を教えておきなさい」と言われますが・・
色々嘘ばっかりつかなあかんやん!
とうんざりして、精神的にも参ってしまいます。
そして実際に携帯を持ちたくても契約自体ができない人が多いのも現実です。
【逮捕は突然にやってくる】からです。
みんな逮捕されることが前もって分かっていれば
身辺整理をする暇もあるでしょう。
しかし、大体は突然逮捕されます。
なので携帯電話が未払いのまま止まってしまっています。当然携帯電話のブラックになっていて、出所した時には契約ができない状態になっているからです。
中には家族がちゃんと支払って解約してくれていて大丈夫な人もいますが
そんな人たちは身元引き受け人も家族なので更生保護施設に来る事もありません。
携帯電話問題は更生保護施設がもっと積極的に取り入れていかねければいけないんじゃないかなぁ?とアウトロー主婦は思うわけです。
私?
私はこっそり友達にiPhoneを契約してもらいました。
契約してもらってこっそり持って帰ったのですが、4年近く携帯の進化を
知らない間にiPhoneが発売され、何も知らないで、いちびって持ったがために
電源の切り方がわからず・・
寮への帰り道にコソコソ携帯を触っていたのですが、とうとう寮に到着してしまい
なんとか横のスィッチを見つけサイレントにしたまではよかったんですが・・・
事務所について、鍵を取り出しこっそり部屋に帰ろうとした時に職員に話しかけられました。
沈黙・・・(事務所も静か)
プー プー プー プー プー・・・・
シーーーーん(職員、耳を澄ませて沈黙)
プー プー プー プー プー
はい・・見つかった〜!内緒でしかも今日!契約したばかりのiPhone、没収。
と言う事もあったような無かったような(笑)話です。
話は逸れましたが、こんな風に出所してから仕事を探し決めるまでに
絶対的に必要な携帯電話がなかなか借りれないと言う事です。
そして仕事も携帯電話がなければ怪しまれるだけでなく、なかなか決まりません。
仕事自体で一番、就いている人が多かった職種は
ビジネスホテルなどのベットメイキングやビルやオフィス、マンションなどの清掃業が多かったように思います。
皆、一生懸命に過去を隠しながら自立に向けてお金を貯めるために必死に働いていました。
お金を貯めるといっても、一人暮らしをして自立する金額ですから
直ぐには貯まりません。
事務所の職員に管理してもらいながら、人によっては掛け持ちをしながら働いてる人もいます。
寮費や食費もかからないし、服や下着や靴まで寄付されたものが沢山寮に送られてきます。
選り好みせず贅沢言わず、一切お金を使わない生活は十分にできるようになっています。
ですが、やっぱり女です。
化粧だってしたいし、少しくらい自分の好きな服も着てみたい。
これらも一切我慢して、お菓子も買わずに
仕事して帰宅して寮のご飯を食べて、静かに眠る・・
こう言う生活をしている人は
とても早くお金をためてさっさと寮を出て行きます。
更生保護施設で大体の目標とされる貯金金額は30万前後です。
寮で生活するのは平均で5ヶ月ほど。
皆これを必死で貯めて自立して行きます。

更生保護施設から家を探す時に困ること
私が実際にお金をためて、更生保護施設を出る目処が立った時
まず、施設を出てから住む家を探すところから始めなければなりませんでした。
自分の貯金した額内で家を探すことはもちろんですが一番困ったのが
保証人がいない事。
そして、不動産会社に今の素性をどこまで話せばいいのか本当に困りました。
まず
不動産会社に最初に提出する紙に書く現住所で不動産会社に
「あれ?」みたいな顔をされます。
今時、本当に困るんですがなんでも「検索」するんですよね・・。不動産会社の人も私の現住所を悪びれもなく検索した時に
普通に検索結果に更生保護施設って出るんです。
困りました・・。
みたいな、ややこしいことになってきて
隠し通せなくなってくるわけです。
なので更生保護施設の説明から入り非常に面倒臭い事になってしまう。
更生保護施設から家を探す時にみんながここで悩みます。
私だけではなく、大体の人はこの「現住所」で働き先や不動産で躓く事が多いのです。
不動産屋によっては、刑務所帰りだと分かると
途端に目の色を変えたりする所もあったりで、【身の裾にあった】じゃないけども
とんでもないボロアパートを紹介してくるような薄情な不動産会社もあります。
「おそらく、ここくらいじゃないと審査が通らなないんじゃないかな・・」
ガッテム!!!キィーーー!!( *`ω´)!
となる事が本当に多い「家探し」。
私の場合はすごく親身になってくれる不動産会社でしたので
なんとか寮の現住所でも、パスできるワンルームを紹介してもらい
保証会社の審査も通って、無事に事無きを得たのですが
私の場合は現住所をたまたま検索しなかっただけで、更生保護施設からの住所だと分かると断わられたと言う人が沢山いました・・
このように更生保護施設に支えられ助けられて生活してるんですが
時に更生保護施設が仇となり自らの首も締めてしまう・・。
そして身動きが出来なくなって行ってしまう。
刑務所から帰ってきても「はいゴール!」じゃ無いんですね。
刑務所から帰ってきてからが最初のスタートであって、社会からはまだまだ隔離されてるようなものです。
隠して生きていく。
簡単な事ではなく肉体的にも精神的にも身を削られますが
隠せるなら一生隠し通してくべき事なのかも知れません。
私は隠さない生き方もありだな、それならこうして記事にして行こうと考えた女ですが・・・
更生保護施設を出てから思う事
私は更生保護施設にいる時に仲よかった人達とも一切連絡先を告げずに寮を出ました。
この更生保護施設さえ出たら、もう付き合う「理由」が見当たらなかったからです。
そして働いていたところも辞めて、新しく仕事をはじめました。
何処に行くのも、知らない街、人。
出会う人たちには過去を話したことはありませんし
この先も話す必要はないのかな?と感じています。
更生保護施設に集まる人たちは
犯罪や非行を繰り返してきた人達ですが
それぞれの、過ちを追求するんじゃなくて
今まで自分が生きてきた生活を振り返って、何が間違っていたのかなどを考えることのできる場所でもあり職員の暖かい指導もあるのが更生保護施設です。
今までの自分の生き方の結果が犯罪や非行に至ったと言っても過言では無いので、こう行った気持ちを決して忘れる事なく生活していく事が、再犯を防ぐ事に繋がっていきます。
私が今もこうして安定した生活を送れているのも、まずこの「更生保護施設」という国の受け皿があったからだと思っています。





